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非生産的テスト

[日記]
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1 みっちょん “普通” 2015年05月01日(金) 15時26分
「そんなこと、仲間を最初に殺った時からわかっていますよ」
 アリスは己が手の内を眺めながら言った。
「同じ人形でありながら魂を持った同類を殺し続ける。自分は一体何者なのか。敵なのか、味方なのか。あたしの目的は?立ち位置は?自分はなにをしようとし、どこへ向かって歩いているのか」
 処刑に使う鋏を強く握り、氷のような無表情をいっそう冷たくした。
「自分が偽りの存在でしかない事だけは実感できる。その虚無感は、常にあたしにつきまとう。不安。でも、仕方がない。それは、あたしが選んだ道ですから」
 そう言って自嘲気味に笑った後、金髪の処刑人は、それなのに・・・と呟いた。
 陰気な目い鋭い光が映える。
 と、鋏を握る白く細い腕を振り上げ――
「許せないッ」
 左腕に突き刺した。
「許せない許せない許せないッ!」
 三度、腕をいびつな鋏で引き裂いた。
「はぁっ、はぁっ・・・」
 血がしたたり落ち、足元に溜まりをつくった。アリスは荒い息を整えると、不意に顔を上げてにっこり笑った。 
 

2 みっちょん “普通” 2015年05月01日(金) 15時47分
 生白い腕を鮮血がいくつもの筋をつくって流れる。
「ごめんなさい、せっかくもらった体なのに」
 一応の謝罪を述べるアリスの口調は表情の割に淡白で、自分の体などもはやどうでもいいというような響きさえ聞こえるようだ。
「こういうの、癖になっちゃったんです」
 自分のおっちょこちょいを告白するようなおどけた口吻である。そこだけ見れば、どこにでもいる人間の少女となんら違いはない。
「誰の所為でもない、自分が選択を誤ったから。自分が殺したから。自分が悪い。自分の所為。自分が虚無に苛むような道を選んだのはあたし。だから、時々こうやって罰してやるんです。お城を抜け出した人形共みたいに」
 うふふ、と軽く笑う。
 しかし目だけは笑っていない。それどころか己の暗愚を憎み、蔑むような強烈な自己嫌悪が表れていた。

 
経験値は上がらなかった

3 みっちょん “普通” 2015年05月01日(金) 20時52分
「ならば私がお前の落ち着く居場所をやろう」
 鎖に繋がれた壊れかけた人形の奥、暗闇のむこうから声がした。
「誰です」
 アリスはとっさに身構える。
「アリス、お前のようなやつだから信用できる。主のために汚い仕事を全うしてきた処刑人だからこそ」
「貴方はあたしのことを信用しているようですが・・・あたしは貴方が何者なのか、分かりかねているのですよ」
 水道から水が滴る様にアリスの指先から血が滴になり、血だまりに跳ねる。
「姿を見せてください」
 静かにそう言った。
 奥の人影は何も言わず、足音も立てずに姿を明かした。
「・・・そういうことですか」
 何かに納得したようにアリスはひとりうなずいた。
「どうも脱走する人形が多いと思えば・・・今まで奴らをたぶらかし、脱走するように仕向けてきたのは、貴方だった」
 陰から出てきたばかりのそれは、壊れかけた人形を見やり、ふと憐れむような表情をした。

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3ゲット! 経験値が40ポイント上がった
レベルが8になった! <<オヨヨ>> をおぼえた!

4 みっちょん “普通” 2015年05月01日(金) 21時57分
「今日からあなたと手を組むことになりました」
 アンブレラ社の古巣から海を望んでいるセワシの後ろから、声をかけてきた女がある。
「アリス・シュンガーと申します。以後、お見知りおきを」
 セワシは一瞥をくれただけで、特になんの反応も示さなかった。
「聞きましたよ、セワシさん。貴方、生みの親である野比のび太さんを殺し、さらにはあの暗黒卿の打倒にまで一役買ったそうじゃありませんか」
 アリスは口の端を吊り上げて凶悪な顔で笑った。
「貴方のことはよくわかりますよ。同胞を殺すあの感覚は、とても口で言えたものじゃありませんよねえセワシさん」
 遠い波の音に混ざり、はあ、とため息が聞こえた。
「よくしゃべるな、お前」
 相変わらず相手の方を見向きもせず、寡黙なセワシは重い口を開けた。
「俺のことをわかっているようだが、お前はどうなんだ。同じように命を授かった仲間を殺し続け、血の海を漂ううちにここへ来た。自分で行き先も決められない、相も変らぬ空虚な人形・・・違うか」
 セワシの丸い背中を見つめる血走った鷹の目が、大きく見開かれた。
「いいことを教えてあげましょう」
 背中の巨大な鋏をセワシの肩にぴったりと沿わせる。
「何年か前から、わたしの城では英才教育制度が採用されています。そこで教育を受けた生徒は将来城を護る重要な役職に就くことになっているのですが・・・」
 ふと、アリスは言葉を切った。
「毎年毎年、卒業する生徒の数は入学する生徒の半分を切る。留年などという制度は廃止され、訓練は厳しくも辞退は許されず、逃げ出す愚を犯す者は一人だっていない。そもそもそのような不届き者は参加すらできないのに。――どうしてだと思います」
 うふふとアリスはさっきまでの悪人面はどこへやら、少女らしくゆかしい声で笑った。
「殺し合いですよ。教育の最終段階で、同じ母のもとに命を授かり、昨日まで同じ釜の飯を食ってきた仲間内で殺しあうんです。親友も恋人も関係ない。その地獄の中では、自分以外は全て食うためのエサでしかない」
 改めて目の前で自分に背を向け座る男をまじまじと眺める。
「今日からわたしも貴方とおなじアンブレラ社の一員です。――気を付けてください、私には」
「・・・お互いにな」
 セワシの電光刀がわずかに光を放つ。
 アリスが再びいびつな笑みを浮かべると同時に、巨大な凶器がセワシの肩から離れた。  
「まあ、明るく楽しくやりましょうよ。お互いが最後の相手にならないことを祈ってね」
 ゆっくりとセワシが立ち上がる。
「一度でも仲間を手にかけた奴は、ろくな死に方をしないものだ・・・覚悟しておけ」
「うふふふ・・・それじゃあもう、私も貴方もすでにろくでもない人間ってことですね」
「いや」
 セワシは歩を進めた。
「俺はのび太のクローン、お前はあくまで人形だ。因果応報は人の常だが、それ以外の異形はどう転ぶかわからねえ。もしかしたら死ぬ間際になって、本当の自分に気づかされるのかもしれない」
 暗黒卿の言葉だ、と去り際に付け加えた。
「俺にとっちゃ気に食わねえやつだが、あいつの最期は、幸せそうだったぜ」
 すでにセワシの姿はそこにはない。
 アリスは新しい相棒の言葉を噛みしめるように、同じ場所に立ち尽くした。


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経験値が20ポイント上がった

5 みっちょん “普通” 2015年05月01日(金) 22時39分
 シャグランの使い魔共は大勢で獲物を取り囲み、もうアリスを我が物としていた。
 それでも彼女の魂を抜きとれないのはひとえにアリスが最期の手段、秘密道具のバリアをはってしまったからである。
 とはいえ、さしもの暗黒卿の愛用具もこれほどの猛攻に耐えきれるわけもなく、次第に結界は歪みつつある。
 使い魔共の血がべっとりついた鋏を地面について、アリスはしゃがみこんだ。
 ――セワシさん、本当に、貴方の言った通りですね・・・
 一体の使い魔が甲高い鳴き声をあげ、鉤爪でバリアを引き裂こうとしている。
 もう、数秒と持たないだろう。
 鬨の声が、だんだんと大きくなる。バリアが弱まっている証拠だ。
 ――貴方も、自分が死ぬときになって本当の自分に気が付いたのでしょうか。
 バリアにいくつもの穴が開く。
 崩壊が始まった。
 ――セワシさん、どうやら、あたしは・・・
 結界が完全に崩壊した。無数の使い魔が我先にと群がってくる。
 アリスは軋む体に鞭打って震える足で立ち上がり、セワシと邂逅した日のように、不気味に口元を吊り上げて笑った。
 巨大な銀の鋏を捨て、懐からかつて自分の左手を突き刺した奇妙な形状の鋏を取り出す。
 それは全てを悟ったうえでの諦観でも死を思い出の品とともに飾ろうという粋な計らいでもない。
 爽やかで新鮮な感覚がアリスの胸を駆けた。
 それは恐らく。
 ――ろくでもない人間・・・・・・でも、なかったみたいですよ・・・
 無数の使い魔がアリスにつかみかかり、押し倒した。さらに別の一体が鉄の札をはりつけようとした、その時。
 アリスは右手の鋏を、自分の胸に渾身の力で突き刺した。
 使い魔たちが悲鳴を上げる。
 突然の非常事態に使い魔は右往左往し、互いにぶつかり、押し合い、混乱を引き起こした。
 ここにきて、かのアリスを追いつめたシャグランの配下たちがにわかに烏合の衆と化したのである。
 血が止まらない。
 何秒か続いた痙攣は、もうおさまった。
 離別の日、父からもらった奇妙な鋏は、皮肉なことにとうとう自分を傷つけることにしか使われなかったのである。
 

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経験値は上がらなかった

6 みっちょん “普通” 2015年05月03日(日) 01時41分
「あんた達なんかにTウィルスは・・・お父さんは渡さない。渡すものですか」
 静香の顔に険しさが増した。
 可愛らしい、同年の子供を惹きつけるあの笑みはもうない。悲壮な覚悟と壮絶な敵意が刻まれた悪鬼の如く凶悪な表情である。
 母の体で眠る胎児のように厚く護られた父を背に、悪鬼は刀を構える。
「ということは、貴方が静香さん・・・初めてお目にかかりますね」
 アリスは目を丸くした。
「噂は聞いていますよ、元アンブレラ社秘密開発部の切れ者」
 そう言いながら目線は敵から離さず、懐から刃渡り三十センチ以上の長い鋏を取り出して空を切り、タンタンタンと小気味よく鳴らした。
「例のウィルス拡散事件の折、お父様を亡くしてから密かにアンブレラ社を抜け、裏で背徳卿に歯向かおうとしていたとか」
「・・・何が言いたいの」
「いえ、血も涙もない非道で残虐なアンブレラ社の連中の中にも、貴方のような人がいたのだなと思って」
 揶揄するでもなく、アリスは対峙する敵に向かって正直な気持ちを打ち明けた。
 それは恐らく、多くの仲間を殺し、目標のためならたとえ主でも容赦なく裏切ってきた浅薄な自己を蔑視した彼女なりの尊敬を込めた言葉だったのだろう。 
「無駄話はそこまでだ」
 セワシが仕切り直した。
「セワシさん」
 アリスが呼びかけても寡黙な剣士は相手を睨めすえたまま動かない。
 しかし、言いたいことは伝わっていたようで、
「・・・守りたくはないが、のび太との約束がある。なるべく殺さない」
 と静かに言った。
 アリスは満足気にうなずくと、黙って鋏を握る手に力を込めた。 
 
経験値が19ポイント上がった

7 みっちょん “普通” 2015年05月04日(月) 17時20分
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「どうだい、悪い話じゃないと思うけどね」
 出木杉は相変わらず余裕ぶった顔を崩さずに言った。
「そうだな。お前と組めば静香ちゃんをもとにもどせてのび太が開放される」 
「それだけじゃない。背徳卿の打倒にも手を貸してやろう」
「なに?」
 たけしは耳を疑った。
「なんだってお前がご主人様を倒さなくちゃならねえんだ」
「背徳卿はなにを思ったかアンブレラ全部を切り離し、何やら妙な計画に着手している。このアジトにゾンビが多いのはそのためだ。背徳卿は間接的にでも自分の存在を知る者すべてを始末するつもりだ」
「なんでえ、その妙な計画ってのは」
「わからない。ただ、自分の両腕であるアンブレラを切り離すっていうんだから奴にとっては相当重要なものに違いないよ」
 不敵な天才少年は初めて歯噛みしてもどかしい表情をした。
 たけしは彼の表情に嘘は見いだせない。
「・・・なるほどな。ここの事情に精通しているお前がいれば百人力だ」
「そうだろう。君のジャイアンズにプロ野球選手が入団するようなものさ」
 出木杉の口調に気取りや虚勢はなく、ただ事実を述べているといったような響きだった。それほど少年たちの暗黒卿襲撃は無謀なものだったのだろう。
「確かにこのツーアウト満塁のピンチでお前がついていてくれれば、それだけで状況は逆転する。・・・・・・だが、ひとつだけ問題がある」
「何だい」
 出木杉は怪訝そうに眉をひそめた。
「お前が、心底憎いんだ」
 異形の血で汚れたバットの一線が出木杉を襲う。咄嗟に後ろに飛んで難を逃れる。
 「スーパー手袋」のアシストを受けたたけしの腕は人ならざる力で部屋の壁を砕き、さしもの屈強な金属バットもL字にひしゃげて見る影もない。
「お、落ち着くんだたけし君!君の妹を殺したのは、もとはと言えば背徳卿が・・・」
「うるせええっ」
 雄たけびをあげながら、通常のスピードとパワーをはるかに凌駕した怪力でたけしはバットを振り下ろす。
 肉眼で捉えきれなくなったバットが出木杉の頭をかち割り、血と脳漿をぶちまけようとする刹那。
 目もくらむほどの白熱した閃光があたりを包む。思わず目を閉じたのは一人だけではない。
 それでもバットを止めない――いや止められなかったたけしは何の感触も得られぬまま体勢だけを崩した。
 ――まずい。
 喧嘩で磨いた直感でそう感じたたけしは、不安定な体勢のまま後ろにころがった。
 直後、再び強烈な光が広がり、たけしがほんの数秒前立っていた場所を溶かした。 
 間髪を入れず立ち上がったたけしの目に、奇妙な光景が映る。
 さっきまでいた部分のコンクリートの床が溶け、赤く煮えたぎるコールタールになっている。
 それだけではない。
 たけしの金属バットの三分の一、ちょうど折れ曲がったところから先が溶けてなくなっている。断面は溶解した鉄が滴になってポタポタ落ち、本物の蝋燭のようだ。
「背徳卿の道具の一つ、熱戦銃さ」
 油断なくたけしに銃口と鷹のような目を向けながら出木杉が言った。 
「そのままじゃ僕まで危険だから多少は改造してあるけど、人ひとりを殺すなんてこれで十分だ」
 銃口を傾ける。
「バットを捨てろ。そして僕を仲間のところまで案内するんだ」
「出木杉・・・」
「早くしたまえ。君は殺さないでおいてやると言ってるんだ」
 たけしはそれでも動かない。
「お前、いつからそんな甘い奴になった」
「え」
 次の瞬間、たけしは半分しかなくなったバットで宙を凪いだ。突風が出木杉の頬を撫でる。
「う・・・があああっ」
 叫び声をあげながら、目を押さえて出木杉がのたうち回っている。 
 たけしが振るったバットから跳んだ、溶けた鉄が出木杉の目を襲ったのだ。
経験値が18ポイント上がった

8 みっちょん “普通” 2015年05月04日(月) 22時10分
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 静香の電光刀とセワシの剣がぶつかり、弾き、時に火花を散らす。金属音が耳をつんざき、突発的な青い光がいくつもの筋を描く。
 静香とセワシは虎と竜のように激しく斬りあった
 一方でアリスは背後から敵を虎視眈々と狙い、隙あらば討たんといった様子である。敵はセワシに任せ、自分は完全にサポートにまわる。いつもの戦法である。
 だが、セワシとの立ち合いに集中しているとはいえ、電光刀の加護をうけた静香に隙らしい隙は無い。一人の相手に集中しつつ他方への注意も怠りない。
 相手が全く隙をつくらない場合、こちらから仕掛けて隙をつくらせるしかない。
 アリスは戸惑うことなく奇妙な形の鋏を静香の首筋に突き立てんと振り下ろした。彼女は確信している。自分がいかなる技を尽くしてこの少女に立ち向かっても、それが通ることはないだろうと。母親が赤子の手を払うが如くたやすく跳ね返されてしまう。
 案の定、アリスの一撃は刀のひと凪ぎで振り払われてしまった。それでもなお相手を攻める。今とはまた別の形で。
 ――所詮敵は機械で操られているだけの傀儡に過ぎない。いたるところから攻撃を仕掛ければおのずとボロはでる・・・・・・それが彼女の考えだった。
 しかし。機械とはいえ半端ではない。アリスのどんな攻めにも柔軟に対応し、かつセワシへの攻撃もおろそかにはしない。
 いや、いまや形勢は逆転している。セワシが押され始めているのだ。その分余裕ができた静香はアリスへ攻めても来ている。
 アリスはそれをなんとか受け止めてやり過ごすが、静香の激情を孕んだ一太刀一太刀はまるで巨大な一本の斧のように重く、小さな鋏ひとつではとても耐えきれない。
 そして。
「でやああっ」
 静香が荒武者のような声と共に放った一閃で、アリスの小鋏は吹っ飛んだ。
 反射的に背の大鋏に手をのばし、振るう。
 高い金属音とすさまじい振動。あと一瞬反応が遅ければアリスはそれさえも感じられなかっただろう。
 大きく飛び退いて距離をとる――同時にはるか後方でカシャンと小鋏が落ちる音がした。
 セワシに目で合図を送ると、大きく剣を振るって後ろにとんだ。
 アリスは腰を低くし、鋏を開き床と平行に構える。そのまま、セワシを追う静香に猛牛の如く突進した。
 はっと気づいた時にはもう遅い。鋏のリーチは完全に静香をとらえていた。
 さらにもう一方からは、セワシの剣が静香の首を狙って風を切って迫る。
 跳んでもしゃがんでも静香は助からない。
 
経験値が17ポイント上がった

9 みっちょん “普通” 2015年05月04日(月) 23時30分
 絶対絶命のピンチでアリスは――
 とっさに縦にした刀の腹を敵にみせ、鋏の根元にはさんだ。
 さしものアリスの大鋏も鉄までは切れない。むなしく刃がこぼれるだけである。
 同時に深くお辞儀をするように背中を曲げ、横からくる剣のひと振りをやり過ごす。
 鋏は使えず、剣は外す――転じて隙だらけなのは二人の方だ。
 剣から手を離さぬまま、アリスの腹に拳を、セワシの腹には蹴りをそれぞれ叩き込んだ。
 電光刀の効果で二人は二メートル近く吹っ飛んだ。
 とうてい素早い復帰は望めまい。
 もはやこれまでか――
 そう覚悟した時。
 
経験値が16ポイント上がった

10 みっちょん “普通” 2015年05月09日(土) 20時28分
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「呪いを受けたのです」
 女は蛇を彷彿とさせる陰湿な目を細めて言った。
「呪い?」
 呪いとは、丑の刻参りとかそういったものか。
「幼少の時分に母からもらいうけたもので・・・」
 言いながら左腕の袖をまくる。
 私は目を見張った。その女の腕は包帯で包まれているが、全体にわたって妙な隆起がある。まるで出来損ないの粘土細工のように。
「お見せいたしましょうか」
「ぜひ」
「・・・誰にも言わないでくださいませ」
 女はスルスルと包帯を解く。その動作はまるで身体を他のものへ捧げる処女のようで、やけに艶めかしく私の目に映った。
 そして純白の封印から解かれたそれは、彼女の動作にすっかり見惚れていた私の頭を揺り起した。
 口が。
 二つ、三つ、四つ。
 合計四つの口がその腕にはあった。
 血かと思うほど赤い紅を塗り、熟れた柘榴のようにぱっくり割れた唇からは鉄漿付けをした歯が黒光りしていた。
 そして、そのひとつひとつが笑っている。
 声こそ出さねど、ニィと裂けんばかりに口の端を吊り上げて。
「怖いでしょう。気味が悪いでしょう。私も気持ちが悪くて悪くて仕様がないのです。ただでさえこうなのに、夜になると時々喋る」
「それは・・・どういう風に」
「それはもう、ぎゃあぎゃあと。怯えたカラスみたいに甲高い声で。中には泣き出す奴もいる。それが憎たらしいったらなくて」
 女は初めて憎々しげな顔をした。
「だから」
 冷たい声だ。
「喋れなくしてやるんですよ」
「どのように」 
「歯を一本一本へし折って、舌を引っこ抜く。そうすると血を飛ばしながら役に立たない口が喚くんです。うるさいことには変わりないのですが、必死に足掻くのを見るのは快感です」
 歯を折られ舌を千切られた口が、血と涎を泡にして親鳥に餌をねだる雛鳥よろしく叫ぶ・・・想像するだに寒気がする。
「どうなさいました。・・・やはりご気分を」
 そんな私を心配してか、女は気づかわしげに私を見た。
「いえ・・・問題ありません」
経験値が17ポイント上がった

11 みっちょん “普通” 2015年05月09日(土) 20時52分
 彼女は水を持ってきてくれた。
 私はお礼もそこそこに、酷い運動の後みたく一気に飲み干した。
「それで・・・」
 私は本題に切り出す。
「どうしてあんなことをしたのです」
「あんなこと・・・?」
「とぼけないでください。貴方でしょう、あの大量の肉塊は」
「ああ、そのことですの」
 女はポンと呑気に手を打った。
「貴方はどこからか寄り集まった人達に・・・」
「いいえ。それは思い違いでございます」
「何が思い違いですか」
「私はただ、人の呪いが見たかっただけ」
「だけ?」
「そう、それだけ。人様の体を奪おうなどと思ったことは片時もありません」
 きっぱりと言い切った。
「では、どうして彼らは」
「差し出したのでございます」
「は」
「彼らは自分から腕を差し出したのです」
「それでは元も子もない」
「私もそういって断りました。貴方のものは貴方のもの。ゆめゆめ譲ろうだなどと思いなさるな、と」
 ふと女は悲しそうな目をした。
「あんなに言ったのに」
経験値は上がらなかった

12 みっちょん “普通” 2015年08月29日(土) 15時46分
「わたし、あなたにお礼がしたい」
「なに?」
「お礼がしたいの。あなたは、わたしの願い事をかなえてくれた。だから・・・」
 武三は鼻で笑った。無言のまま小娘がと目であざけっている。
「私のできることなら、何でもするわ」
「自分の命も守れんかったお前さんに何ができる」
「・・・」
 辛辣な皮肉。それを言われると蓬生に立つ瀬がない。
 と、武三は意地悪そうな顔に気味の悪い笑みを浮かべた。
「だが、頼みたいことがないではないぞ」
「本当?」
 蓬生の顔がはっと明るくなった。
「お前さん、何でもすると言ったな。・・・なら、この儂の憎しみを、なだめて見せろ」
 そう無理難題をふっかけた。
経験値が19ポイント上がった

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